日本で行われている節分の行事は、もともと中国で行われていた「大儺(たいな)」という行事に由来しているといわれています。
大儺が日本で独自に発展して、やがて追儺(ついな)という儀式となりました。
どちらも鬼を払う儀式のことです。
今日でも神社の節分行事で追儺の儀式が行われているところがあります。
この追儺では「桃の弓」や「桃の杖」などを使って鬼や疫災を追い払います。
なぜ「桃」が使われているのでしょうか。
節分といえば「豆」のイメージしかなくて不思議な感じがします。
ここでは桃と豆の魔除けの力についてご紹介します。
桃の魔除けの力
中国では桃には魔除けや長寿の力があるといわれています。
桃の種は実際に漢方で利用されていて、特に婦人科系の薬として処方されているそうです。
日本でも桃には魔除けの力があると考えられていました。
そのことは神道の神話の中に見られます。
神道とは、日本固有の信仰です。
仏教が6世紀に伝わった時に、仏教に対して「神道」という名前であらわされるようになりました。
神道は日本の民族宗教といわれています。
日本人の生活のいろいろなところに神道の行事を見つけることができます。
日本という国をつくったふたりの神様がいました。
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)という神様です。
このふたりが多くの神様を生み出しました。
伊邪那美命は最後に火の神様を生むと、その時に大やけどをして亡くなってしまいました。
あまりの悲しさに伊邪那岐命は、死者の国である黄泉の国(よみのくに)へ伊邪那美命を連れ戻しに出かけます。
黄泉の国の食べ物を口にしてしまった伊邪那美命は、もとの国には戻ることはできません。伊邪那美命は、黄泉の国の神様に相談をしてくるので待っているよう、伊邪那岐命に言い残しました。
そして、決して自分の姿を見ないようにと伊邪那岐命に伝えました。
かなり長い時間が経ち、伊邪那岐命は待ちきれなくなって、火を灯して辺りを見渡してしまいました。
そこには恐ろしい姿となった伊邪那美命の姿がありました。
怖くなって伊邪那岐命は逃げ出しました。
自分の姿を見られた伊邪那美命は、約束を破られたために恐ろしい形相で伊邪那岐命を追いかけました。
伊邪那美命とその身からでた悪霊などの黄泉軍は1500体にもおよぶものでした。
黄泉の国と現実の世界の境目まで逃げた伊邪那岐命は、黄泉比良坂(よもつひらさか)という場所につきます。
そこには桃の木が生えていました。
伊邪那岐命が追手に向かって、その桃の木から桃の実(種)を3つ投げると黄泉軍は桃を嫌がって一目散に退散したのです。
助かった伊邪那岐命は桃に木に向かって、「わたしを助けたように、この国で苦しい目にあって悩んでいる者がいたら、これからも助けてあげなさい」と命令し、邪鬼を払う桃の木に「意富加牟豆美命(おほかむづみのみこと)」という名を授けました。
この神話から桃が魔除けの力をもっているという信仰が日本にもあったことがわかります。
豆の魔除けの力
日本人は農耕民族で、米や豆には穀物の霊が宿っていて、聖なる力があると信じられてきました。
神社では「散米」という厄を払う神事が古来よりおこなわれていました。
平安時代には方違え(かただがえ)という風習があり、これは節分の日に「翌年の恵方にある家に宿をとる」というものでした。
これが簡略化されて、室町時代には「家の中の恵方にある部屋に移る」という風習へ変わり、この時に新しく移る部屋の厄払いをするために豆をまいたといわれています。
これが豆まきの始まりといわれています。
豆まきには「魔目(まめ)」を鬼の目に投げつけて鬼を滅するという「魔滅(まめ)」という語呂合わせから、邪鬼を追い払うという意味合いもあるのだとか。
鬼の目を炒った大豆で打ちつぶしたという由来伝説もあるそうです。
豆もかなり強力な魔除けの力がありそうですね。
桃と豆の融合
中国から伝わった追儺の儀式も、豆まきの厄払い行事も、どちらも旧暦でいう大晦日の日に行われていました。
そのため、しだいに合わさっていって、現在の節分の行事につながっていると考えられています。
桃のない季節に桃をまくことはできません。
神社やお寺の節分祭で使う豆は、神主さんが「桃の実の霊力をこの豆に授けて下さい」と祝詞(のりと)をあげて捧げてから使う豆です。
祝詞というのは、神道の祭祀を行うにあたり、神に対して唱える言葉のことです。
まとめ
桃も豆もどちらも魔除けの力を持っていることは一緒なようですね。
現在使っている暦は、昔の暦(旧暦)から変わっていますので、大晦日や節分の日も違います。
豆にも霊力があるのなら、そこに桃の霊力が授けられれば、とても効果がありそうですね。
桃太郎や桃の節句など、昔から伝わっているものには「桃」が登場するものがたくさんあります。
中国から伝わった文化と仏教と神道の考えがいろいろあって、とても奥が深いものです。
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